潜水業務安全教育講習 ブラックアウト潜水編


 ブラックアウト潜水。
 これは、マスクを覆い、無視界にした状態で、
 低視界潜水のトレーニングを行う事です。

 こんにちは。
 亜寒帯潜水技術研究所 工藤和由(NAUI CD 17113)です。

 今年、勤続25年になりました。
 あと2年で、インストラクターとしても25年。
 
 長いようでもあり、
 まだまだようやくここだと言う感じもします。
 負け惜しみかもしれませんが、

 「若けりゃいいってものではない!」
 「若者にバトンタッチすりゃいいってものでもない!」
 「むしろ、おじさんになってからでも需要がある!」

 と、言う仕事だと思ってもらわなければ、
 若者の誰しもが、こんな茨の道になんて飛び込んできません。

 だって、おじさんは、
 「若者の将来そのもの」
 なんですもの。将来肩をポンと叩かれると思われたら、

 「おしまい」なんですよ。
 
 実に、ゴールなんてない、
 そう言うお仕事ですね。
 インストラクションと言うものは。

 おじさんだって、キラキラしているぜっ!

 さて、今回のテーマは「ブラックアウト潜水」です。
 
 スタッフのお遊びとして、
 マスクを覆い、潜ったことはあります。
 また、MSDの講習時には、やや見える、
 「グレーアウト?潜水」までは行なっています。

 まさか、講習内容に組み込むとは、
 この歳になるまで、思いもよりませんでした。

 今回は、先のブログでもご紹介させていただきました、
 沿岸地域の消防署の隊員、そして、学校の後輩がいる
 北見管内さけます増殖事業協会のみなさんへ、
 「ブラックアウト潜水」を含めた潜水安全教育講習を実施。

 両者とも、潜水スキルの底上げはもちろんのこと、
 低視界(ほぼ無視界)での作業環境と言うこともあり、
 ブラックアウト潜水を導入したのでした。

まずはウォーミングアップに生存水泳25分

逆あおりなどの特殊泳法訓練

息こらえでの慣らし潜水

スキンダイビング技術訓練

ディスプレイメントでのスノーケルクリア

●とても大切!コンファインドウォーターでの訓練 

コンファインドウォーター(プール)でのトレーニングは、
 定期的に実施するべきです。

 スキルの細かい部分まで確認でき、
 新しい発見までありますので。
 
 ガシガシの気合と根性で行うトレーニングも、
 私は否定しませんが、限度はありますし、
 レベルによっては、段階も必要です。

 亜寒帯潜水技術研究所でのトレーニングは、
 とにかくガシガシ気合で行う方法ではありません。


  •  なぜこの方法が必要なのか?
  •  本人のレベルに合致しているのか?
  •  負担をかけすぎ、効率を落としていないか?
  •  トレーニングステップは参加者に最適か?


 これらに主眼を置きながら、
 基礎中の基礎を反復しつつ実施しております。
 
 参加者の生活背景、時代背景、社会背景も、
 常に変化しておりますので、
 指導者の武勇伝的な押し付けは無意味なのです。

 その代わり、定期的に、長く、おつきあいさせて頂ければと思います。

 さて、このプールワークでのメイン。
 ブラックアウト潜水についてです。

潜降中はストレスとの戦いです

●評判がよかった「ブラックアウト潜水」

管理しやすいコンファインドウォーター。
 その反面、広くは無いと言う我慢どころもあります。

 ブラックアウト潜水のトレーニング効率を図るため、
 ガイドロープを立体的に張り、
 中層での浮力感にも対応するようにいたしました。

 視界があるときとの違いは、
 ズバリ、浮遊感の増大と、
 方向感覚の麻痺です。

 機会があれば、みなさんもお試しください。
 目を瞑って中層を泳ぐと、
 ほとんどの場合、方向感覚が麻痺し、
 フィンキックも左右の強弱差で、
 右か左か、どちらかに屈折し進んでしまいます。

 無視界潜水も含む低視界潜水は、
 極力「ガイドロープ」を活用するべきです。

 参加された皆様からは、
 なかなかこのようなトレーニングはありませんので、
 非常に良かったとのお言葉をいただきました。 

 合計4回の開催でしたが、
 私共指導員も、指導方法を確認するために、
 事前にトレーニングをしておりました。

 指導の際は、相手は見えませんし、言葉が使えません。
 なので、事前の接触シグナルを確認することが重要。
 または、ロゴシーズなどの通話装置を利用することが有効。

 これで、潜水業務安全衛生教育講習に、
 一つ、メソッドが追加されました。

ガイドロープやラインは必須です

 ●絡んで踠いてパニパニパニック

もう一つ、海でのトレーニングをご紹介します。
 北見管内さけます増殖事業協会の潜水士達。
 デマンド送気式にて潜水作業を行うほか、
 網の点検でスクーバ式でも潜水します。

 この時、怖いのが、
 流れがある川の中、設置した網に絡む可能性が高い。
 と言うことでした。


 そこで、広い海の中。
 心おきなく、網に絡んでいただきました。

 何が一番引っかかりやすいのか?
 どのように脱出するのかを、
 身をもって体験いたします。


 上の写真の通り、スノーケルが引っかかりやすいのです。
 ついで、ゲージやオクトパスなどをぶらぶらさせているもの。
 そして、タンクとファーストステージの部分が絡みやすいです。

 絡みから脱出できない時間と、
 ストレスの増大は比例します。
 
 網などの絡みやすい場所での潜水業務時は、

  •  スノーケルは外す
  •  ゲージ、オクトパスはハーネスなどに固定
  •  脱着しやすいように装備はシンプルに
  •  定期的なトレーニングの実施


 これが重要なのです。

●BCの間違った解釈

潜水作業者のなかで、たまに見受けられるのが、
 「スクーバ潜水時のBC未装着」です。

 BCは浮力調整具を指しますので、
 インフレーターとブラダー(袋部分)が必ずあります。
 それを外すと、単にハーネスやバックパックとなります。

 そのハーネスにタンクをホールドし、
 そのまま潜ってしまうのです。

 BCを装着することは、
 高気圧作業安全衛生規則上、規定されています。
 と、言うのも、そもそも論で、

 「救命胴衣の装着が義務づけられている」からです。

 スクーバ式での潜水事故の多くは、水面で浮力確保ができず、
 溺れて沈んで行く為、救命胴衣が義務付けられています。

 平成14年になると、BCは救命胴衣がわりになるとの改正があり、
 スクーバ式の場合は救命胴衣よりもBCの方が使い勝手が良く、
 そのまま「BC着用が義務!」となっていきました。

 でも、正しい解釈は「救命胴衣着用が義務」なのです。

 ドライスーツをきている場合、BCへ給気することは、
 ウェットの場合よりも少ないのは事実です。
 しかしながら、ドライスーツは救命胴衣にはなりません。

 ドライスーツへ多く給気し、
 水面に浮いていると、頚動脈を圧迫し、危険です。
 また、身動きもしづらくなります。

 BCを着用しない作業者の言葉は、概ね、
 「BCが引っかかるので危ない。」
 「保安庁だって着用していないではないか?」
 と、言うものです。

 BCは、言うほど絡まった事例はありません。
 と、言うよりも、引っかかるので危ないと言う方は、
 そもそもBCを着用していないことがほとんどで、
 実際のところは良くわからないそうです。
 本音は「周りが使っていないから。。」とのことです。

 また、保安庁は現在、着用をしているそうです。

 BCは潜水作業者にとっても「安全」になります。
 必ず着用しましょう。
 
冷水訓練

潜水士問題集。みなさん是非!

 最後に、今回の安全衛生教育講習では、
 潜水士試験準備対策講座も実施いたしました。

 テキストは、
 須賀次郎先生と、私で執筆したもので、
 重版のたびに、少しづつ改定しています。

 今年に入り、
 潜水士試験準備対策講座へ参加いただきました皆様は、
 なんと、全員合格!

 実は、講習も、テキストも、ツールでしかなく、
 一番は、参加者全員の努力の賜物なのです。

 本当にみなさん、頑張りましたね!
 おめでとうございます!!

 先進的であり、安全第一の潜水士として、
 各方面でのご活躍を、応援しております!!

 
 さて、このブログをご覧になられました法人様。
 是非、潜水業務の安全衛生教育講習を、
 弊社、亜寒帯潜水技術研究所へご相談くださいませ。


 次のブログは、
 2018 然別湖コタン アイスダイビングの報告です。

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