2016年10月30日日曜日

インストラクターは器材をセールスするのも任務。

雪と潜水器材


 今年は、10月に入ってから、海象に恵まれませんでしたね。
 とても残念。。。なんともはや、もうすぐ11月ですよ。

 昨年は雪が積もるのが遅く、
 12月末まで、全然積もりませんでした。
 今年は、結構積もりそうな予感。。。

 そんな北海道、
 爽快だった夏も過ぎ、海はまた来年。
 と、いう声も聞こえて来ます。

 みなさんそれぞれ、嗜好も志向も違いますが、
 日本、特に北海道は、四季がハッキリしていますから、
 秋、冬、春の海も、夏には無い楽しさがあるものです。

 ダイビングの本当の楽しさを知る方は、
 ・オールシーズン、ダイビングを行う
 ・地元の水中をこよなく愛する
 ・季節や環境、潜り方に見合った器材を使う
 ・       〃      スキルを身につけている

 私は、10月、11月、12月の「秋〜冬」
 1月、2月、3月の「厳冬〜春」
 4月、5月、6月の「春〜初夏」

 この9ヶ月間こそ(特に積丹は3月〜5月)
 北海道のダイビングシーズンだと思うのです。

 秋から冬の3ヶ月は、アイナメやクジメ、ホッケの卵保護が見られ、
 厳冬〜春は、アイスダイビングやホテイウオの幼魚を楽しみ、
 春〜初夏は、勢力が移り変わる「海藻」の世界に感動できます。


10月からアイナメの卵保護が見られる

産まれたての卵

クジメの卵塊

ハッチアウト前

ホテイウオの幼魚

5月。もうすぐ深場へ旅立つ

2月のアイスダイビング

氷は80cmにも達した

2月に遭遇したトド

3月の緑藻類

4月のワカメとホソメコンブ

5月のコンブ

 こんなに素敵な水中世界。
 感動もあれば、学びもあります。
 
 しかしながら、水深こそは深く無いですけれど、
 この時期は低い水温、また、季節によっては低い視界。
 それは、ダイビングを難しいものにしてしまいます。

 それらリスクを受け入れ、
 器材準備とトレーニングを行うことで、
 感動を得ることができるのです。

 水中世界での感動は、インストラクターの功績ではありません。
 自然の解説や見せ方など、エンターテイメント性は必要ですが、
 そもそも自然環境がすごいのであって、そこに感動があるのです。

 まとめると、インストラクターの役目は、
 講習生に感動して頂くため、リスクもあることを理解していただき、
 それに対して必要な知識とスキルの提供、そして、

 「必要な装備、器材のススメ」

 と、いうことです。


極地へ近づくにつれ、器材にごまかしが効かない


 順番的には、知識→器材→スキル ですね。
 リスクマネジメントを行う中で、避けて通れない”前提”は、
 ご自身の器材を熟知し、使い慣れていることです。

 とっさに変化することもある水中環境。
 反射的に操作できるよう、器材の使用感に慣れるだけではなく、
 視界が狭く、身動きが取りづらい中で、見なくても操作できること。

 また、北海道特有の「コールドウォーター環境」では、
 レギュレーターの凍結についても備えなければなりません。


器材の凍結

 と、言うことで、インストラクターは
 知識とスキルトレーニングの提供だけでは役不足。
 マイギアのススメも行わなければ、任務を全うしていると言えないのです。

 インストラクターに不足していて、
 講習生にうまく伝わっていないと感じるのは、

 ・器材の知識とセールス
 ・高圧ガスの知識、ガスマネジメント

 だと思っています。


寒いとガスの消費も早くなる


 もちろん、ポセイドンでは、レンタルも用意していますが、
 それは、原則として、初心者向けのサービスです。

 初心者とは体験ダイビングや体験スノーケリング、
 一番初めのダイバー認定コース受講中までの話です。

 ダイバー認定を受けた段階から”初級認定ダイバー”です。
 初心者とは若干ニュアンスが違います。

 アドバンス認定では、確実に”中級認定ダイバー”となります。
 
 比較対象とはなりづらいですが、例えば、
 ・そろばんを習って能力検定5級です(10級から1級まで)
  でも、そろばんは、いつも誰かから借りています。
 ・スキーのバッジテストを5級から受けますが、目標は1級です。
  でも、今はスキーをレンタルしています。
 ・車が好きで、ドライブが趣味です。でも車は持っていません。
  いつも、レンタカーです。

 などなど、どうですか?
 違和感を感じませんか?


認定ダイバーの定期的なトレーニング

 また、レンタルは、いつも有るとは限りません。
 数、サイズには限りがあります。なければ活動に参加できません。
 そして、水深計やダイバーズウォッチもレンタルにはありません。

 講習基準で、水深計とダイバーズウォッチは講習生にとって必須ではなく、
 インストラクターが必ず持ち、管理しているのです。

 認定後は、水深と時間の管理を、ご自身で行わなければなりませんから、
 本来、確実にご用意していただかなければ、ならないのです。

 上記の理由から、ポセイドンでは、器材の購入の際、
 一番初めに「ダイブコンピューター」をご用意されることを
 皆様へオススメしています。


時計と水深計も兼ねるダイブコンピューター


 それでも残念ながら、レンタルがいつでも使えると言う、
 間違った風潮が当たり前のようになってきました。

 レンタルが、当たり前のように用意されると勘違いしてしまうのは、
 業界の風潮もあると思いますが、一番問題なのは、
 インストラクターの意識が低いことにあります。

 インストラクターは「売りつけられた!」
 などという、間違った言葉に惑わされることはありません。
 インストラクターは、講習生に器材を勧めるのも任務ですから。

 その代わり、インストラクターは、
 オススメする器材に責任を持たなければなりません。
 たまには自己投資を行なって、使い試し、比較することも大切です。


レックでもケーブでも無い使い方を模索

 そうして、信頼を得ることで、
 本来のダイビングに必要な「知識、技術、安全に対する姿勢」を
 講習生へ提供することができるようになるのです。

 これで初めて、ダイビングと言う事業が成立します。
 ここでハッキリ言います。ポセイドンの利益の源泉は、
 「皆様にマイギアを用意して頂くこと」なのです。

 昨今、様々な業界において、大切なバランスが崩れています。
 車も買わない、持たない、必要ない、と言われる現在、
 ダイビング器材も、もちろん同様に言われています。

 生活環境が変わり、便利すぎる不便さを感じる中であっても、
 水中世界で活動するには、絶対的に器材が必要ということは、
 今までも、これからも、変わりません。


ダイビング専門店 ポセイドンの店内

 しかしながら、プロショップが現地サービス化し、
 器材販売を諦めてきているように感じます。
 
 コスト高とリスクがある器材販売を縮小し、
 ツアーなど、ソフト面を拡大する傾向が、よく見られるわけです。
 
 器材メーカーも商売にならず、縮小または減少する中で、
 ますますそれが加速すると、
 レンタルだってままならない時代になるかもしれません。

 いくらソフトを充実させても、
 絶対的に必要な器材がなければ、
 ダイビングは成立しません。

 そのうち、レジャーダイビングそのものが、
 成立しなくなることも、ありえなく無い話です。


インストラクターはマイギアしか使わない

 レジャーダイビングを、持続可能なものにするためには、
 ダイバーも器材の重要性を理解し、
 インストラクターも、責任ある任務を果たすべきなのです。

 最後にもう一度。
 優秀なインストラクターは、
 講習生やダイバーに「器材のセールス」をいたします。

 と、言うことで、今回の内容はここまでです。

 11月20日まで、ポセイドンでは、
  ドライスーツ、コンピュータ、スクーバセットの
  大特価SALEを開催中です

 次回は、高圧ガスと、ガスマネジメントについて書きます。

2016年10月23日日曜日

亜寒帯潜水技術研究所の活動初め


 The Institute of Subarctic Diving Technology
 亜寒帯潜水技術研究所

 北海道は全域、亜寒帯湿潤気候と言われており、
 また、面積は83,457㎢と、九州の約2倍、四国の約4.5倍、沖縄の約37倍。
 
 さらに解りやすく、車での移動距離を、大まかにまとめると、
 ポセイドン⇔積丹町 ≒ 東京駅⇔神奈川県小田原市
 ポセイドン⇔浦河町 ≒ 東京駅⇔静岡県下田市(伊豆)
 ポセイドン⇔然別湖 ≒ 東京駅⇔静岡県浜松市
 ポセイドン⇔釧路市、函館市、稚内市 ≒ 東京駅⇔愛知県名古屋市
 ポセイドン⇔弟子屈町 ≒ 東京駅⇔三重県四日市市
 ポセイドン⇔羅臼町、根室市 ≒ 東京駅⇔京都府

 守備範囲は、果てしなく広い。。。。
 北海道と言っても、一括りにはできない環境の違いがあります。

 その、北海道、亜寒帯をベースに、
 亜寒帯潜水技術研究所(以降、ISDT)は活動を行います。
 
某所港内にて

 ISDTについて、以前ブログにも書いたことがありますが、
 競争戦略における、社内資源アプローチにあたり、
 我が社の「コアコンピタンス(企業の中核となる強み)」について、

 ・潜水クオリティの向上と維持
 ・潜水活動の監督部門
 ・寒冷地機器の精査、研究
 ・ポセイドンの歴史におけるコーポレートアイデンティティの整理
 
 を担当し、そして、通常の潜水講習だけではなく、
 潜水士へ向けた、安全衛生教育講習も担当する
 いわば、旅団戦闘団のような存在です。

フィンワークのトレーニング中

 近頃のISDTの仕事は、ポセイドン43年の歴史において、
 受け継がれてきた「安全に対する姿勢」を文書にまとめ、
 コーポレートアイデンティティとして整理することに力を注いでいます。

 また、メイン業務の一つでもある、
 消防の水難救助隊へ、安全衛生教育訓練を実施していました。

 消防本部では法令上、管轄の消防署に、救助隊を設置していますが、
 港、湖や沼、ダム、河川など、水難事故が発生しそうな地域では、
 救助隊が、水難救助隊を兼任していることが多いようです。

 潜水に関して、消防学校などでの専門研修もあるようですが、
 義務ではないようで、地域的な諸事情で、参加できないことがあるとの事。
 また、集中した潜水訓練の時間も、充分に割くことができないそうです。

視界不良潜水訓練

視界30cmくらい

 しかしながら、彼らが水難救助活動を行う場所は、
 ・冷水域であること
 ・視界不良であること
 ・障害物があること
 と、潜水を難しくしてしまう環境要因が揃っています。

 また、ダイバーであればよくご存知でしょう?
 潜水器材は、何度も反復して使用することで、
 自分の思い通りに操作することができます。

 水難救助隊には、
 環境などの外的リスク要因だけではなく、
 訓練不足や経験不足などの内的リスクも存在していると言えます。

潜水前のバディチェック

フィートトゥギャザー

 水難救助隊と言っても、労働者です。
 したがって、潜水士資格がなければ、潜水業務に就けません。
 もちろん、安全衛生教育も必要となります。

 安全衛生教育は、雇入れの際、配置換えの際だけではなく、
 潜水のような性質では、職場内で自主的かつ定期的に実施すべきで、
 年に数回は、私達のような専門家による訓練およびチェックも必要でしょう。

ライトはスポットで

水中トランシーバー ロゴシーズも

障害物や様々な物が転落している港内

 今年、ISDTが実施した消防向け事業は、

 ・高気圧作業安全衛生規則の変更点(講義)
 ・潜水士試験準備対策講座(講義)
 ・太平洋沿岸の街での安全衛生教育講習(実技)
 ・屈斜路湖での安全衛生教育講習(実技)

 の、以上であり、
 11月には、隊員が自主的トレーニングで札幌に。

 実技のデモンストレーションは、
 視界不良だと、見えないこともありますので、
 積丹やプールで実施となります。

学科講習中

天候に恵まれた屈斜路湖

ブリーフィング中

 今回の2件、
 どちらも、水難救助隊がいつも潜る場所で講習をいたしました。
 隊員の皆さんは、体づくりもなされており、さすが順応性が高い。

 しかし、過酷な環境(特に視界不良)に併せ、
 良いバディになりきっていない「潜水器材」
 その中で、実際のバディとコミュニケーションを図りながら、
 任務を遂行すると言うことは、非常にストレスが高くなります。

インフレータブルボートにて

エントリー前

 安全管理、危機管理をするためにも、まずはトレーニングです。
 そして、様々な応用技術の選択肢がある中でも一番大切なことは、
 定期的な「基礎技術」のトレーニングです。
 
 応用技術は、基礎技術の上に成り立つものであり、
 基礎技術は、習得いかんにかかわらず、
 何度も定期的に行われるべきものです。

これから水中脱着です

 基礎技術は、
 ・体づくり
 ・泳力、フィンワーク
 ・マスククリアなどの視界の確保
 ・レギュレーターリカバリークリアなど呼吸の確保
 ・浮力の調整と確保 です。

 もちろん、物理、生理、器材、環境、ガス各論、減圧理論などの
 基礎知識も重要となります。

 それから、活動することが考えられる環境において、
 捜索手法やバディコミュニケーション、救助訓練など、
 応用技術のトレーニングとなるわけです。

エアシェアも練習しましょう

 亜寒帯潜水技術研究所といたしましては、
 水難救助隊の皆様へ、安全衛生教育講習と言う形で、
 その活動のお手伝いをさせていただければ幸いです。

水温は12度でした

バディとロゴシーズを使用したコンパスナビ

天候が急変

時化の為、深度潜水は中止に。。。

暴風雨です

無事に戻れました

 最後に、
 私達も、基礎トレーニングを疎かにせず、
 様々な知識と技術を提供できるよう、さらに精進いたします。

 ちなみに、下は、2010年に作った、
 ポセイドンスタッフ トレーニング基準です。
 


2016年10月6日木曜日

ダイビングは、恐怖をマネジメントすること。


 最近、申し訳ないことに、ポセイドンウェブサイトの更新が滞っています。
 ウェブを作ること、維持することは大変なのです。。

 ウェブ作成は料理に似ています。

 作るのに手間暇がかかるけれど、
 食べるのは一瞬。
 
 その一瞬の評価のために、あれこれと作るのです。

 昔と違って、外注などしません。
 と、いうことは、お品書き、新鮮な素材の仕入れ、下ごしらえ、などなど、
 全て自分で行わなければならないのです。

 今までと違って、企画を立てる部署ではなく、立場でもないので、
 掲載ネタをもらってから、ウェブへ投稿するしかありません。


企画し実施したライトトラップダイビング

 また、すごいスピードで、ウェブのあり方も変わっていきます。
 今や、かっこいいウェブサイト、いい写真は当たり前で、
 調べたいことをダイレクトに、スマホを使ってぐぐるわけです。

 PCのソフトも、スマホアプリとの連動性を重要視されていて、
 PCソフトの機能改悪すら発生しています。
 
 それだけ、スマホに依存している世の中、
 ウェブ作成ソフトも、PCとスマホ両方に最適化できる、
 レスポンシブル対応になってきました。

 今まで使用していたソフトも、まさかのサポート終了となり、
 新しいバージョンを入手。レスポンシブル対応です。

 と、いうことで、今のポセイドンウェブサイトも、最低限修正は加えますが、
 11月末にも、フルリニューアルを予定しています。

 もうしばらくお待ちくださいね。


イソバテングの口にクローズアップ

 
 さて、前置きは長くなりましたが、
 みなさん、ダイビング中に恐怖を感じたことはありますよね?

 みなさんもご存知の通り、私、極度の高所恐怖癖です。
 隠したところで、仕方がありませんし、
 自分のウィークポイントは、自覚すべきだと思っています。

 もし、同じだと共感する方がいたとすれば、
 諦めることはなく、一緒にうまくやりましょうと言いたいです。


見えても見えなくても恐怖することがある

 そんなことで、色々考え込んでいました。。。
 正直、この職業をやめようと思ったことは何度もありました。

 最近は、また、高所恐怖癖が強く出てきたところで、
 どう付き合っていくべきなのかを調べていました。

 そこで、こんなことが書かれていました。
 ・ポジティブに考えないこと
 ・うまくいくと自分に言い聞かせないこと
 ・パニックから逃げないこと
 ・恐怖を認識すること
 ・チャレンジして慣らしていくこと

 恐怖を認識し、沈静することを体験する。
 解ったことは、今まで正しいと思っていたことが、
 全て逆効果ということでした(汗)

 特に想像力豊かなかたに多く発生するらしく、
 これから起こるかもしれない未来の不確定さに恐怖を感じる、
 「未来思考」が悪い方へ働くというものでした。

 ポジティブに考えないことも、逆説的に言うと、
 ネガティブがあるからポジティブにしようとするもので、
 悪い方へ働くこともあるという。

 なるほど。。

 ただし、人間は、予想などをすることで、安全管理などを考えられる。
 それは正しい「脳の機能」なのですが、
 どうも、正と負が紙一重、ということらしいのです。


低視界は恐怖との共存

 そして、行き着いた書籍が、
 ハイパフォーマーは知っている 恐怖に負けない技術 辻秀一著」
 でしたが、なかなか有益な内容でした。

 以前、ブログでも書きましたが、ダイビングのスキルトレーニングでは、
 マスクを水中で外すなど、講習生にとって「壁」もあり、
 スキルを身に付ける前に「恐怖」をどうにかせにゃならん事も多々あります。

 今までは、とにかく、自信がつくまで、そして身につくまで、
 反復練習を行う、うまくいくイメージを作る、とにかくやる、、
 とても「恐怖」への対処までは至っていなかったのではないだろうか?


心の中で、もし?が恐怖になる。

 結論として、ダイビングのスキルを達成させるためには、
 「恐怖」をマネジメントすることからトレーニングしなければならない。

 器材などのストレスは、マイギアを揃えて、使い慣れること。
 知らないことへのストレス対処は、クラスルームやブリーフィングなどで。
 と、これらは、どんなインストラクターでもできる内容。

 一流のプロであるインストラクターは、
 講習生が抱える「恐怖」に対して、
 マネジメント方法をトレーニングすること、なのでしょう。

 前回のブログに書いたことに追加ですね。

 そして、自分自身、
 高所恐怖癖などの「恐怖」をマネジメントし、
 少しずつでも克服していきたいと思います。

 ちなみに、恐怖をマネジメントする時に
 まず最初に必要なことは、
 恐怖している自分を自覚、認識すること、とのことです。
 
インストラクターは万能ではない。自覚、認識が大切です。